テナントが決まりやすい物件・決まりにくい物件の特徴と改善方法

店舗や事務所などのテナント物件を所有しているオーナー様の中には、「なぜこの物件はなかなか決まらないのだろう?」と悩まれている方もいらっしゃると思います。
駅から近いのに決まらない物件がある一方、駅から離れた場所でも、比較的早く借主が見つかる物件もあります。
また、きれいに内装を仕上げた物件がなかなか決まらず、何もないスケルトンの物件に複数の問い合わせが入ることもあります。
この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
私は約20年、不動産業に携わり、個人事業主から中小企業、大手企業まで、さまざまな出店希望者の物件探しをお手伝いしてきました。
その経験から感じるのは、物件の条件が良いか悪いかだけでなく、その条件を求めている借主がいるかどうかが重要だということです。
今回は、実際に店舗を探しているお客様が重視する条件や、決まりやすい物件・決まりにくい物件の特徴、オーナー様ができる募集条件の改善方法についてお話しします。
1. 個人・中小企業と大手企業では、物件選びの優先順位が違う
店舗・テナントの募集を考えるうえで、まず知っていただきたいのが、借主によって求める条件が大きく異なるということです。
私が日頃の仲介で感じている傾向として、個人事業主や中小企業と、大手企業では物件選びの優先順位が違います。
個人・中小企業は「賃料」を重視する
個人事業主や中小企業のお客様が物件を探す際、最初に重視されることが多いのは賃料です。
もちろん、立地も重要です。
しかし、どれほど希望に合った立地であっても、予算を大きく超えていれば、そもそも検討の対象に入らないことがあります。
例えば、月額賃料20万円までで店舗を探しているお客様に、賃料25万円の物件を紹介しても、簡単には検討していただけません。
個人や中小企業にとって、毎月の固定費は事業の収支に直結します。
そのため、まず予算に合う物件を探し、その中から立地や広さ、設備などを比較する傾向があります。
大手企業は「立地」を優先することが多い
一方、大手企業の場合は、立地を最優先に考えるケースが多くあります。
例えば、駅前や繁華街、観光地、ロードサイドなど、出店戦略に合った場所であることが重要になります。
希望する立地でなければ、賃料が安くても検討されないことがあります。
反対に、出店したい場所であれば、周辺相場より高い賃料でも検討される可能性があります。
もちろん、すべての企業がこの考え方に当てはまるわけではありません。
しかし、個人・中小企業は賃料を優先し、大手企業は立地を優先する傾向があるという違いは、募集条件を考えるうえで重要だと思います。
オーナーが考えるべきこと
ここで大切なのは、ご自身の物件がどのような借主に向いているかということです。
例えば、個人事業主からの需要が中心となる立地で、大手企業を想定した高額な賃料を設定しても、なかなか問い合わせにつながらないかもしれません。
逆に、大手企業からの需要が期待できる希少な立地であれば、安易に賃料を下げる必要はない場合もあります。
募集賃料は周辺相場だけでなく、実際にその物件を借りる可能性があるお客様を想定して決めることが大切です。

2. 居抜きとスケルトン、どちらが決まりやすい?
店舗・テナントの募集では、内装の状態も借主の判断に大きく影響します。
特に飲食店や美容室などでは、居抜き物件を希望するお客様が多くいらっしゃいます。
ただし、居抜きとスケルトンのどちらが良いかは、想定する借主によって変わります。
個人・中小企業は居抜きを希望するケースが多い
個人事業主や中小企業の場合、開業時の初期費用をできるだけ抑えたいと考える方が多くいらっしゃいます。
飲食店であれば厨房設備、美容室であれば給排水設備や空調、内装などをそのまま利用できれば、工事費用を抑えられる可能性があります。
もちろん、前のテナントの設備がそのまま使えるとは限りませんし、業種や店舗のコンセプトによっては全面的な改装が必要になることもあります。
それでも、使える内装や設備が残っていることは、借主にとって魅力になる場合があります。
大手企業はスケルトンを希望するケースが多い
一方、大手企業では、店舗のブランドイメージや仕様が決まっていることが多く、スケルトンの状態を希望されるケースがあります。
既存の内装が残っていると、かえって解体費用が必要になる場合もあります。
そのため、内装が残っていることが必ずしもメリットになるわけではありません。
退去時の内装は残すべきか、撤去すべきか
「退去するテナントの内装を残した方がよいでしょうか?」と相談されることがあります。
私が判断する際に重視しているのは、その内装を必要とする借主からの需要が期待できるかどうかです。
例えば、個人経営の飲食店が多く出店するエリアで、まだ利用できる厨房設備や内装が残っているのであれば、居抜きで募集することが有効な場合があります。
一方、大手企業からの需要が中心となる立地では、スケルトンの方が検討してもらいやすいこともあります。
ただし、内装を残す場合には、設備の所有権や故障時の責任、退去時の原状回復などを明確にしておく必要があります。
また、契約上、借主に撤去義務がある場合は、内装を残すかどうかについて事前に合意することも重要です。
単に「残せるものは残した方が得」というわけではありません。
物件の需要に合わせて判断することが大切です。
3. テナントが決まりにくい物件の特徴
ここからは、私が実際の仲介で感じている、借主が見つかりにくい物件の特徴をご紹介します。
特徴① 駅から離れているのに駐車場がない
店舗の立地を考えるうえで、駐車場の有無は重要です。
特にロードサイドや駅から離れたエリアでは、車で来店するお客様を想定する業種が多くなります。
そのような場所で駐車場がなく、近隣にも借りられる駐車場がない場合、出店できる業種が限られてしまいます。
例えば、美容室や整体院、物販店などでも、車での来店が多いエリアでは駐車場の有無が出店判断に影響します。
駅前や繁華街であれば駐車場がなくても需要が期待できる一方、駅から離れた場所では大きな弱点になることがあります。
ただし、駅からの距離だけで判断できないエリアもあります。
例えば、川越の蔵造りの町並み周辺などの観光地では、駅から距離があっても観光客による人通りが多く、駐車場がなくても店舗需要が期待できます。
大切なのは、駅からの距離だけではなく、その場所にどのようなお客様が訪れるのかを考えることです。
特徴② 好立地ではない30〜40坪のスケルトン物件
これは、実際に難しさを感じることがある物件の一つです。
例えば、駅から少し離れた場所にある35坪のスケルトン物件。
広さだけを見ると、事務所としての需要が考えられます。
しかし、事務所を探しているお客様は、床・壁・天井・空調などが整い、そのまま使える状態を希望するケースが多くあります。
スケルトンから事務所仕様にするには、まとまった工事費用が必要になります。
一方、飲食店や美容室を探している個人事業主にとっては、35坪という広さが大きすぎる場合があります。
広い店舗では、賃料だけでなく内装工事費用や設備費用も高くなりやすいためです。
もちろん、大型店舗を希望する企業が見つかる可能性もあります。
しかし、立地や設備によっては、想定できる借主の範囲が狭くなってしまいます。
特徴③ 物件の弱点が募集賃料に反映されていない
私が最も多いと感じるのは、このケースです。
立地があまり良くない、駐車場がない、内装に費用がかかる、業種に制限がある。
こうした条件があるにもかかわらず、周辺の条件が良い物件と同じ程度、あるいはそれ以上の賃料で募集されているケースがあります。
借主は複数の物件を比較します。
そのため、弱点がある物件でも、それを補う魅力があれば検討されますが、条件が見合っていなければ選ばれにくくなります。
決まりにくい物件とは、必ずしも立地や設備が悪い物件ではなく、物件の条件と募集賃料が合っていない物件ともいえるのではないでしょうか。
関連記事:川越でテナントが決まらない5つの理由
4. 立地が不利でも決まる物件には「希少性」がある
ここまで決まりにくい物件についてお話ししましたが、条件が悪そうに見えても、実際には高い需要がある物件もあります。
その理由の一つが、希少性です。
駐車場付きの物件は大きな魅力になる
例えば、駅から離れていても、十分な駐車場が確保されている物件であれば、車での来店を想定する業種から需要が期待できます。
特に、周辺に駐車場付きの貸店舗が少ない場合には、それ自体が大きな魅力になります。
以前の記事でもご紹介しましたが、当社が仲介した物件に、1階が駐車場、2階が店舗・事務所、3階が住宅というロードサイド物件がありました。
賃料は比較的高めの設定でしたが、早い段階で借主が決まりました。
この物件は、店舗・事務所と住居、駐車場を一体で利用できるという特徴がありました。
一般的な店舗物件とは異なる使い方ができるため、その条件を求めるお客様にとっては魅力的だったのだと思います。
賃料の安さも魅力になる
反対に、立地や設備に弱点があっても、賃料が十分に安ければ需要が生まれることがあります。
例えば、立地が良い物件では採算が合わない業種でも、固定費を抑えられる場所であれば出店できるかもしれません。
もちろん、安くすれば必ず決まるわけではありません。
しかし、立地の良さだけが物件の魅力ではないということです。
駐車場、広さ、建物の使い方、賃料など、他の物件にはない特徴があれば、それが借主に選ばれる理由になります。
5. 問い合わせが少ないとき、オーナーができる改善方法
では、募集を開始してもなかなか問い合わせがない場合、どうすればよいのでしょうか。
私は、まず借主が検討しにくい原因を考えることが重要だと思っています。
対策① 駐車場など、物件の弱点を補う
例えば、駐車場がないことがネックになっているのであれば、近隣で月極駐車場を確保できないか調べてみる方法があります。
物件自体に駐車場がなくても、近くに利用できる駐車場があれば、検討できる業種が増える可能性があります。
もちろん、駐車場の位置や台数、費用などによって効果は変わります。
それでも、単に賃料を下げる以外の方法として検討する価値はあると思います。
対策② スケルトン物件の一部を事務所仕様にする
スケルトンであることが原因で借主の範囲が狭くなっている場合には、貸主側で一部の内装工事を行う方法もあります。
例えば、事務所としての需要が期待できるのであれば、床や壁、天井、空調などを整えることで、借主が検討しやすくなる可能性があります。
ただし、工事には費用がかかります。
そのため、必ずしも全面的な内装工事をおすすめするわけではありません。
実際にどのような借主から需要が見込めるのか、工事費用を賃料で回収できるのかなどを考えたうえで判断する必要があります。
対策③ 大きな区画を分割して募集する
広さが原因で借主が見つかりにくい場合には、区画を分割して募集する方法もあります。
例えば、40坪の物件を20坪ずつの2区画にしたり、30坪の物件を15坪ずつの2区画にしたりする方法です。
個人事業主や中小企業では、10〜20坪程度の店舗を探しているお客様も多くいらっしゃいます。
そのため、30〜40坪の一区画では需要が限られていても、15〜20坪程度に分割することで、検討できる借主が増える可能性があります。
【Laugh Lifeの提案事例】新築テナントを2区画に変更し、現在満室に
当社が新築時の設計段階から携わったテナント物件では、当初30〜40坪程度の一区画として計画されていました。
しかし、周辺の出店希望者の需要を考えると、15坪程度の2区画に分けた方が借主を見つけやすいと判断し、オーナー様にご提案しました。
その結果、計画を変更して2区画で募集することになり、現在は両区画とも入居いただいています。
このように、物件の広さや間取りは、借主の需要を踏まえて考えることで、募集結果が大きく変わる可能性があります。
もちろん、区画を分割するには、間仕切り工事だけでなく、出入口や電気・給排水設備、消防設備などの確認が必要になる場合があります。
工事費用が発生するほか、区画によっては分割自体が難しいケースもあります。
それでも、広さがネックになっている物件では、区画を分割することで借主の対象が大きく広がる可能性があります。
単純に賃料を下げるだけでなく、物件の使い方そのものを見直すことも、空室対策の一つだと考えています。

対策④ フリーレントを検討する
一定期間の賃料を無料にするフリーレントも、募集条件を改善する方法の一つです。
開業時には内装工事や設備の導入など、借主に多くの費用がかかります。
そのため、開業準備期間の賃料負担を軽減できることは、借主にとって魅力になる場合があります。
ただし、私の考えでは、そもそも問い合わせがない状況では、フリーレントだけで大きく反響を改善することは難しい場合があります。
物件の存在を知ってもらえていない、賃料が予算に合っていない、立地や設備が希望と合わないといった問題があれば、フリーレントを付けても検討されない可能性があるからです。
フリーレントは、物件に興味を持っているお客様の契約を後押しする方法として、特に効果を発揮しやすいと考えています。
対策⑤ ポータルサイトの検索条件を意識して賃料を見直す
そして、やはり最も重要なのは賃料だと思います。
ただし、必ずしも大幅な値下げが必要というわけではありません。
例えば、月額賃料201,000円の物件を199,000円に変更するケースです。
差額は月額2,000円です。
しかし、物件検索サイトで「賃料20万円以下」という条件で探しているお客様には、201,000円の物件は表示されない場合があります。
それが199,000円になれば、新たに検索結果に表示される可能性があります。
つまり、わずかな賃料の違いでも、物件を見てもらえるお客様の数が変わることがあるのです。
もちろん、検索サイトごとに条件設定の仕組みは異なります。
それでも、賃料を見直す際には、単に何%下げるかだけでなく、借主がどのような予算で物件を探しているかという視点が大切だと思います。
関連記事:川越の店舗賃料はどう決める?テナントの適正賃料・賃料査定の考え方
6. 募集賃料は「最初から適正」か「チャレンジ賃料」か?
ここまで、借主の需要に合わせた募集条件の重要性についてお話ししました。
しかし、私はすべての物件を最初から相場に合わせて募集する必要はないと考えています。
なぜなら、店舗・テナントは住居と比べて類似物件が少なく、賃料の比較が難しいケースがあるからです。
特に、立地や建物の形状、設備などに希少性がある物件では、どのような借主から需要があるのか、募集してみなければ分からない部分もあります。
そのため、オーナー様に時間的な余裕があるのであれば、最初は少し高めの賃料で募集することも一つの方法だと思います。
オーナーによって募集の正解は違う
例えば、次のような考え方があります。
-
多少時間がかかっても、できるだけ高い賃料で貸したい
-
賃料は多少安くてもよいので、早く借主を見つけたい
-
空室期間が長くなることで、建物の老朽化や管理負担が気になる
-
近い将来に建物の売却や建て替えを考えている
このように、オーナー様によって優先することは異なります。
早期成約を優先するのであれば、最初から借主が検討しやすい賃料で募集する方がよい場合もあります。
一方、多少時間がかかってもよいのであれば、まずは高めの賃料で市場の反応を確認する方法もあります。
私自身、オーナー様から特にご希望がない場合には、物件の条件や需要を踏まえたうえで、少し高めの賃料から募集を始めることをおすすめすることがあります。
高めの賃料で募集するなら、見直す時期も考える
ただし、高めの賃料で募集したまま、何もせず長期間待ち続けることはおすすめしません。
一定期間募集しても問い合わせや内見が少ない場合には、賃料や募集条件を見直す必要があります。
その際には、単に値下げをするのではなく、どのような問い合わせがあったのか、内見後にどのような反応があったのかなどを確認することが大切です。
例えば、問い合わせ自体が少ないのであれば、賃料や広告の内容、募集条件に問題があるかもしれません。
問い合わせはあるものの契約に至らないのであれば、設備や内装、業種制限などが原因になっている可能性もあります。
こうした状況を見ながら、オーナー様と相談して募集方針を調整していくことが重要だと思います。
まとめ|決まりやすい物件にするためには、借主の需要を知ることが大切
今回は、テナントが決まりやすい物件・決まりにくい物件の違いについて、実際の仲介経験をもとにご紹介しました。
私が最もお伝えしたいのは、物件の価値は、立地や広さ、設備の良し悪しだけでは決まらないということです。
駅から遠くても、駐車場が充実していれば魅力になる場合があります。
スケルトンでも、大手企業が希望する立地であれば需要が期待できます。
反対に、立地が良くても、想定する借主の予算に合っていなければ、なかなか決まらないこともあります。
大切なのは、その物件をどのようなお客様が借りたいと思うのかを考えることです。
そして、もう一つ重要なのが、オーナー様ご自身が何を優先したいのかということです。
高い賃料で貸したいのか、早く借主を見つけたいのか。
その希望によって、適切な募集方法は変わります。
借主の需要とオーナー様の希望、その両方を考えて募集条件を決めることが、テナント募集では重要だと考えています。
川越でテナントの空室・募集条件にお悩みのオーナー様へ
「駅から離れているため、なかなか借主が見つからない」
「30坪以上の広い物件を、どのように募集すればよいか分からない」
「賃料を下げるべきか、設備や内装を改善するべきか迷っている」
このようなお悩みをお持ちのオーナー様もいらっしゃると思います。
株式会社Laugh Lifeは、川越市を中心に店舗・事務所・倉庫・工場などの事業用物件を専門に取り扱っています。
20年以上の仲介経験と、日頃からお伺いしている出店希望者のニーズを踏まえ、物件の特徴やオーナー様のご希望に合わせた募集方法をご提案しています。
大切なのは、賃料を下げることだけではありません。物件の魅力を見つけ、その魅力を必要としている借主に届けることだと考えています。
現在空室となっている物件はもちろん、今後テナント募集を検討されているオーナー様も、お気軽にご相談ください。
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